● 一億総お姫様の時代

不妊治療を受ける女性が増えています。
背景には、高齢での出産を希望する人が増えたことから、妊娠しにくい状況があるとされています。
しかし、それだけでしょうか。小山内氏は、それとは別の、文明史的な視点から、近年女性のからだが妊娠しにくくなっていると指摘され、早くから警鐘を鳴らしておられました。
2004年に出版された『今すぐできる体質改善の新常識』(新潮新書)の中で、氏は次のように述べています。
「・・・機械文明の発達した社会では、からだを動かすことが少なくなり、女性のからだが活性を失い、生物学的に劣化しているのではないか。それが卵子の質の低下につながり、 妊娠しにくい状況を招いている」と。
歴史的にみても、妊娠・出産が困難になったのは、ヨーロッパでは貴族の夫人から、日本では大名の奥方からでした。 どちらも多くの使用人に囲まれて、からだを動かすことの少ない人たちです。
大名はなかなか世継ぎができないうえ、お産が困難で無事出産にこぎつけることができにくかったことから、複数の女性を用意しなくてはならなかったのです。
その時代、庶民は子だくさんで、農婦は田の畦でも軽々と出産したというのに、大奥ではお産は一大事なのでした。
現代女性は文明の恩恵を受けて、誰もが大名の姫君のようになってしまったように思われます。

● 卵子の形成が不十分

では、からだを動かすことが少ないと、なぜ妊娠しにくいのでしょうか。
小山内氏は、卵子の形成に問題があるとします。
「女性が妊娠しないのは、多くは受精しても着床しないから。着床しても早くに流産してしまうから、本人も気がつかないうちに平常の生理でおりてしまい、妊娠しないということになります。
おそらくは、卵子の出来が不十分なため、受精しても着床したかしないかのうちに流れてしまったものと考えられる」
流産を繰り返すケースも、卵子の質に起因することが多いといいます。
「ふつうは受精してから3カ月ほどで、受精卵から胎芽、そして胎児となり、外形はほぼ人間の形になります。ここで胎児に異常があれば、流れてしまいます。 淘汰されるしくみになっているのです。受精して着床しても、胎盤にしっかりとりついていないから、流れてしまうということもありますが・・・」
そして卵子の形成に問題が生じるのは、おもに母体をとりまく環境に起因するとします。
「現代のようなクルマ社会では、どうしても身体活動は不足し、手先など偏ったからだの使い方となり、歪みが生じる。
飽食から肥満になって、生理的にバランスを崩す。
冷暖房の普及で、寒暖の刺激の少ない環境で育つことから、ホルモンのバランスが崩れがち」なことを挙げます。
とくに身体活動の不足から、血液循環が悪化していること、刺激の少ない生活環境から、 副腎皮質ホルモンの分泌が不十分であることが、健全な卵子の形成を妨げているのではないかと心配されています。
現代女性は、どうやらふつうに暮らしていても、卵子の形成・成育から妊娠・出産にいたるすべての過程で、問題を抱えることになりやすいようです。

● 高齢でも子だくさんだった昔のお母さん

小山内氏は、ダウン症の増加に危機感を覚えていました。
ダウン症児は、以前は40過ぎの母親からの出産の際に多くみられたものですが、最近は20代の母親にも多くみられます。
ダウン症の発症は、おもに卵子の形成に起因します。
卵母細胞が卵子になって排卵される際に、減数分裂といって、46本ある染色体を半分にする過程を経て23本とし、受精して父親の側から23本きて46本とし、 23対の染色体を持つ受精卵ができます。
ところが減数分裂の際に、1つだけ分裂しにくい染色体があり、それが分裂しないまま卵子となってしまい、染色体の数が47になってしまうことがあります。これがダウン症につながります。
「染色体が正常に割れないのは、おそらくホルモンのバランスや血液循環の良否によるもの。40過ぎの母親に多くみられたということからも、 生物学的な活性と卵子のでき方に問題があると考えられる」と理解します。
ここで誤解されませんように。小山内氏は
「高齢だから問題が生じやすいのではなく、高齢になると活動が不足しがちで、血液循環も悪くなり、ホルモンのバランスも崩れがちなことから、 卵子の形成に問題が生じやすい」といっているのです。
「昔から高齢であっても、子だくさんのお母さんは忙しくて労働が多いから、何人産んでも元気だった」とも。
それにひきかえ、若いお母さんがたにダウン症児がみられるようになったということは、若くてもからだが活性を失い、 生物学的に劣化しているのではないかと危惧されているのです。

● 小山内式を課して、妊娠・出産に導く

小山内氏は、企業の健康管理医をつとめておられた関係で、様ざまな従業員の相談に応じていました。 某金融機関では、流産を繰り返す女性(当時30歳)に相談され、無事出産に導いています。
その手法は、どんなものでしょうか。
「女性の健康状態を調べてみると、血液循環が著しく悪いことが判明。このことから血液循環不十分、 そしておそらくホルモンのバランスが悪いことから、健全な卵子が形成されなかったのに受精してしまい、 その結果、胎児としての正常な発育経過がなく、胎盤の形成も不十分で、出産にまで至らなかったものと考えられた。
そこで、その女性に血液循環を改善するために<ゆっくりランニング>と、ホルモンのバランスをよくするために<冷水浴>をすすめたところ、2年後に無事出産にこぎつけた」
小山内氏は同様にして、不妊の女性も何人か妊娠、出産に導くことに成功しています。
特別な手法を用いることもなく、いつもの小山内式健康づくりを課して、妊娠・出産に至ることができたのです。
最先端の不妊治療に頼ることなく、体質改善することによって全身的な健康を取り戻し、健全な卵子を育むことをめざす小山内流。
もちろんすべて成功するとは限らないでしょうが、やってみるだけの価値はありそうです。

● 安産を約束する小山内体操

お産についてもふれておきましょう。
家事労働が軽減し、ますますからだを使うことの少なくなった若い女性は、背筋力が低下し、お産が重くなっています。
さらに妊娠中ラクをして過ごせば、体力はさらに低下し、胎児は過大に成長し、いよいよ出産は困難なものとなります。
お産が重いと何より心配されるのが、酸欠による脳の損傷です。
出産は、それまで体内で胎盤を介して酸素の供給を受けていた胎児が、生まれ出たその瞬間から自力で呼吸して、酸素呼吸に切り替わる大変革の時なのです。 この経過がスムーズにいかないと、脳性マヒなど障害が後遺症となって残ります。
難産であれば帝王切開すればいいと考える人もいますが、産道を通ることなく胎児に対する呼吸自立のための“適切な刺激”をすべて奪ってしまうことを考えると、 やはり自然分娩に勝る方法はありません。
そこでおすすめしたいのが、背筋力を鍛え、安産を約束する<小山内体操>です。
小山内氏は、前述の金融機関で長年にわたり、健康づくりの一環として、この体操を指導してきました。
そこの女子社員が結婚退職して出産したら、全員超安産だったそうです。
驚いた彼女たちが「こんなにお産が軽かったのは、あの体操のおかげ」と思い当たり、在職中の厚生課長にお礼報告の手紙が多数寄せられたとか。
これを伝え聞いた小山内氏は、意外な体操の安産効果を知り、大層喜ばれたとのこと。
<小山内体操>は、折り紙つきの安産体操なのです。

● すべての女子に<冷水浴>を!

小山内氏は、女性のからだが子を産むのに適しないからだになりつつあることに、強い危機感を抱いていました。その傾向を喰いとめるために、 「女子には冷水浴を課すよう」強く主張されたのです。
<冷水浴>は、冷水の刺激で副腎を活性化し、副腎皮質ホルモンの分泌を促します。
副腎皮質ホルモンは、からだを守る最重要ホルモンです。
前述の通り妊娠・出産にも深く関わっています。
子どもの成長期に<冷水浴>を課して、副腎の発育をしっかりしたものにすると、成人してから、副腎皮質ホルモンを十分に分泌するからだに育ちます。
小山内氏は警告します。
「大人になって、妊娠・出産を前にしてからあわてるのでは遅い。女子は生まれたときから母体を意識したからだづくりをする必要がある。 そのためにかなめである副腎皮質ホルモンの分泌が十分されるよう、早くから冷水浴を習慣づける必要がある」と。
女子のからだには、生まれたときからすでに次の命のもとになる卵母細胞が用意されています。卵母細胞は成熟して、卵子が排出され、受精して、妊娠します。
卵母細胞には、その子が生まれてから成熟するまでの発育の過程がすべて反映され、そこから排出される卵子にも影響してくるのです。
卵子は受精して、次の世代へと受け継がれます。卵子がしっかりしたものであれば、そして妊娠中も健全であれば、健康な赤ちゃんに恵まれることでしょう。
このようにみてくると
「女性は生まれてから成人に達するまでの生活が、次の世代の赤ちゃんに絶大な影響があるものとして育てられる必要がある」という小山内氏の信念が、リアルに伝わってきます。
最後に小山内氏の信念を物語るエピソードをご紹介しましょう。
氏は、ご自分の愛娘が小学校4年のときに<冷水浴>の効用に気づき、成人するまでの毎朝、一緒に多摩川の土手を走った後、水シャワーを浴びるよう命じました。
その成果は20数年後、娘さんが妊娠・出産を迎えたときに実りました。
「妊娠中はつわりなし、経過は良好。お産は30分と、初産とは思えない軽さ。子どもはすべて母乳で育てることができたうえ、その子がまた機嫌のいい赤ん坊で、 健康そのものに育った」
うれしそうに語った小山内氏の顔が思い出されます。


お知らせ!

本稿のもとになった『今すぐできる体質改善の新常識』(2004年刊 小山内博・高木亜由子著 新潮新書)は、本年3月をもって絶版となりました。
同書をお求めになりたい方は、書店では手に入りにくいと思いますので、当ホームページへ直接お申し込みください。
送料のみのご負担で、お送りいたします。
尚、お申し込み多数の場合は、先着25名様までとさせていただきます。
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(文責 高木亜由子)
2012年4月30日  

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